がらくた

双極性障害と、本と映画と、日常と、小説ポエム書いて非日常へと。

小説と詩

季節と花

色をなくした樹々と街は 冬の最中を思わせる 乾いた風は 低い斜陽を見上げれば 寂寥の太陽の燃えるさま 蝋梅はこんなにも強く咲いているのに 桜舞う待ち焦がれた春に涙を覚える 待っても、暗い闇に桜がひっそりと咲いている そこには誰も待っていない 暗くて…

真夜中の都会の自然

終電間際の駅の出口から吐き出され、しばらく歩くと、山みたいな屋根の住宅街に入るここは静かな山の中だから、缶ビールをプシュっと音を立てて、ネクタイを緩めて歩くなんだか悪いことをしているみたいで、ちょっとニヤつく 駐輪場に赤い自転車が停まってい…

【詩】おいかけっこ

おいかけてくるその匂い。良い匂いかはよく分からないけれど、好き。おいかけてくるその声。良い声なのかよく分からないけれど、しびれてしまう。おいかけてくるその顔。綺麗な顔なのかよく分からないけれえお、また見たい。おいかけてくる。その存在。いつ…

【詩】まだよく知らない君への手紙

いつもの帰り道見慣れた住宅街の風景いつも通りの変わらない寂しい夜 この間はその生贄になってくれて、ありがとう深夜のくたびれた間接照明の辛ろうじた暖色の光洗い過ぎて色褪せたTシャツ湿気でくねくねと曲がった前髪なにより、君は、初めて会う僕の手を…

【詩】蓮の花

ほしかったものを手にすると、不安になる願いが叶った代償とはこのことだろうか空を向いて浮いてしまったからには、沈むことは許されない 池の底で叶わない夢を 泥にたくさん沈めた仲間を蹴落として 見上げた 綺麗な空もう 不安しかないあとは枯れて沈むだけ…

【詩】20190526

湿気が高いせいで、肌にふれるもの全てがベタベタする。冷蔵庫の奥から賞味期限が1ヶ月も過ぎた魚の腐った臭いを嗅いでしまい、今でもその臭いが鼻にまとわりついて、吐き気がする。未練はないけれど、楽しかったことばかりが蘇って、もう戻れないんだなって…

【詩】Wi-Fiと僕

いつだって君は来てくれない僕の問いかけに答えてはくれないそして 他の誰かのもとへそうさ 君は マドンナ みんなが呼んでいる必要とされている人が待っているいつだって君は来てくれない僕は君を探して 部屋を歩き回るそして 徒労に終わるそうさ 君は 見え…

【短編小説】みかにゃ豊作音頭

私はふるさとが嫌いだ。いや、ふるさとなんてないと言ったほうが、むしろすっきりする。 私が大学進学を機に東京へ上京するまでの18年間、その場所にいた。私は日本海の一年中荒い波と、快晴なんて滅多にない鉛色の空に囲まれた。その陰鬱な空気にぴったりの…

【詩】せっけん

手を洗う せっけんでよく泡立てて汚れを落とす 洗っても洗っても落ちない汚れ せっけんはどんどんすり減ってゆくよ どんなに新しくしてもすり減ってゆく 今はもう どんなに早く減っても 気にはならない 「もう慣れた」「決して裏切らないもののため」 無感情…

【短編小説】プライド

お母さん。お父さん。ごめんなさい。今から自殺します。 なぁんて思わなかった。自殺するのはほんとうだ。だけど、ドラマみたいにこんな先立つ不幸をお許し下さい。なんてことは一切思わないのが不思議だ。よく自殺志願者にはこう言う人がいる。「君が死んだ…

【短編小説】プライド

お母さん。お父さん。ごめんなさい。今から自殺します。 なぁんて思わなかった。自殺するのはほんとうだ。だけど、ドラマみたいにこんな先立つ不幸をお許し下さい。なんてことは一切思わないのが不思議だ。よく自殺志願者にはこう言う人がいる。「君が死んだ…