【詩】せっけん

手を洗う

せっけんでよく泡立てて汚れを落とす

洗っても洗っても落ちない汚れ

せっけんはどんどんすり減ってゆくよ

どんなに新しくしてもすり減ってゆく

今はもう どんなに早く減っても 気にはならない

「もう慣れた」「決して裏切らないもののため」

無感情で平気に言うことができる

誰も気付かない それでいい

乱れた部屋 嘘まみれた下着

「愛がほしい」 それも嘘

愛された記憶はないから

今日の暇つぶしの相手はだぁれ

こっちの不幸に優しく寄りそう下心 とっくに分かっているけれど

ごめんなさい

今日も他人の幸福に舌打ちをする

手に入るものだと思っていたのに

手のひらで灰になって死んだ

手を洗う

せっけんでよく泡立てて汚れを落とす

そんな毎日のくりかえし

せっけはどんどんすり減ってゆくよ

今はもう 気にはならない