がらくた

双極性障害と、本と映画と、日常と、小説ポエム書いて非日常へと。

夏目漱石のこころを読んで 34歳編 【ネタバレあり】

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そして、現在の私が読んだ感想。

まず初めになんでこれを手に取ったのかというと、kindleで無料という理由もあるが、その前に夏目漱石の「明暗」を読んでいて、夏目漱石の文章ってあっさりしていて読みやすく、登場人物のせりふも何気ない日常のことばかりだけれど、読んでいるこっちがはっと思わされるような、演劇を観ているようなせりふが多くて、なんだか魅力的だなと思った。

そこで、夏目漱石をもっと読んでみたいと思った。

Kも先生も自殺するというオチを知っているので、次に読むときはきっと違った発見ができるだろうと思い、また読むことにした。

 

まず、「先生と私」を読んだ感想。

ここにも書いたが、Kという友人を自殺に追い込んでしまっただけで、そんな偏屈になる必要がないじゃんと思ってしまった。

私(あ、書き手の私ね)の性格は、過ぎたことをクヨクヨする人が大嫌いなので、読んでいて先生の態度にイライラをしてしまう。

ここで気づいたことが、書生である私が先生と正反対で出会っていることだと思った。

私はまだ恋も知らないし、書生で世の中も知らないし、若いから経験も少ない。

それに反して先生は恋というものが人をどれだけ狂わしてしまうのか恐ろしいいものだと知っているし、叔父の裏切りを経験して故郷を捨てたこと。

この正反対のふたりが出会って、どんな科学反応を見せるのだろうかというのも見どころだと思った。

 

そして、「両親と私」

実家に帰った私が、病臥がいる父親に対しての描写。

「もうじき死んじゃうかな?」と読んんでいる私はそう思いながら、でも、なんとか生きている父親。

実はこれも、自ら死を選ぶ先生、生きたいけれど死が迫っている父親との対比が実はなっているのだろうなと思った。

そして書生の私が学校を卒業して将来に向かおうとして先生に頼ろうとした矢先に先生からの長い長い手紙が来る。

何度も思うのが、あの手紙を実際の量にしたらどのくらいなのだろうかと思う。

あと、明治天皇崩御が後々になってちょっとした伏線になっていた。

 

「先生と遺書」は、やっぱり、Kが自殺してから、その後の流れはドキドキしながら、一気に読んでしまった。

そのくらい夢中になった。

先生の弱さ、これは先生だけではなく、人間誰しもがある弱さをすごく浮き彫りにしていると思った。

例えば、

 

私は好んで自分の弱点を自分の愛人とその母親の前に曝け出さなければなりません。

 

それが私の未来の信用に関するとしか思われなかったのです。結婚する前から恋人の信用を失うのは、たとい一分一厘でも、私には堪え切れない不幸のように見えました。

 

この部分は共感できる人がたくさんいるのではないかと思う。

そのぐらい人間の心とは弱いものだと思った。

 

そして、Kの自殺により孤独の影にいつも付きまとわれるようになった先生はKが自殺した原因を考える。

それは、失恋のためだけではない。

 

たった一人で淋しくって仕方がなくなった結果、急に所決したのではなかろうかと疑い出しました。

 

そして、なにより私がとても恐ろしいと思ったのが次の一文である。

 

私もKの歩いた路を、Kと同じように辿っているのだという予覚が、折々風のように私の胸を横過り始めたからです。

 

夏目漱石は「坊ちゃん」や「我輩は猫である」のイメージが強く明るい作家と思われがちだが、結構恐い作品があると聞いたことがある。

まさにこれがその通りだと思った。

最後に少し出てきたのが、明治天皇崩御されたのなら、俺は殉死と言った部分があるが、明治天皇というより、時代の終わりに殉死したのではないかと、思う部分もあった。

 

「こころ」は人間の弱い部分、恐い部分、孤独な部分、ありとあらゆる部分を描いていて、すごくドロドロしているのだけれど、誰にでもある部分で共感せざるおえないと思った。

 

と、34歳になった今の私は感じるようになった。

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