がらくた

双極性障害と、本と映画と、日常と、小説ポエム書いて非日常へと。

真夜中の都会の自然

終電間際の駅の出口から吐き出され、
しばらく歩くと、山みたいな屋根の住宅街に入る
ここは静かな山の中だから、
缶ビールをプシュっと音を立てて、ネクタイを緩めて歩く
なんだか悪いことをしているみたいで、ちょっとニヤつく

駐輪場に赤い自転車が停まっていないかなって
期待するけれど、そんなものはもう、永遠に停まっているわけがなく、
赤い自転車が停まっていなかったら、がっかりしてしまうから、
家にまっすぐは帰りたくない。なんかヘンな気持ちで。

山を抜けて、堤防を上がれば、
都会なのに、大きな川が流れていて、
夜より静かな轟音が聞こえる。

君のペースではじまった恋だったな
でも、歳甲斐もなくはしゃいだ夏でもあったな
まだ昼間は暑いくせにさ、夜になると急にひんやり頬をなでてさ、虫が鳴き出す。
秋が裏切ったようにやってきたんだなって。
見上げると、思いつきのように点々と打った星が光る。

もう、青臭いトシじゃないからさ
めったにしんみりとかしないけれどさ、
やっぱり会いたいなとか思う。
どうせ会ったって、めんどうくさいし、勝手に怒り出すし、居心地悪いなって思うんだけどさ。
自由になったんだけどさ
自由って良いことのはずなのに、つまんなくってさ
こんなにつまんないなら、君に怒られたほうが、いやだけど、ひとりよりは楽しいかなって
そう、思って缶ビールを押し込んで、空を見上げ、鼻をすする

恋愛は苦手だし、よくわかんないけど、君は僕といて楽しかったかな?しあわせだったかな?
まさかね、まさかね、まさかね。
この僕はとても…しあわせ…とかよく分からないけれど、楽しかったのは事実だ
そんなことを聞いたら君はまた怒るのかな
会いたい、会いたい、さみしいよ
そんな君の声の代わりに、虫の鳴き声が返ってくる
星が滲んで、また鼻をすする

 

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