がらくた

双極性障害と、本と映画と、日常と、小説ポエム書いて非日常へと。

【詩】Numb

 

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人生の中でいちばん苦しかったときに聞いていた。


あのときは、今まで感じたことのない風が吹いていた。
強風、ではなかった。
空が曇り、風向きが変わった。
風は少しだけ強かった。
もっと強い風を感じていたから、立つのがやっとだったけれど、越えられる気がしていた。


逆立つ髪、杖にしがみつき、なんとか前へ。
風の音で全てが聞こえなかった。
砂埃で何も見えなくなってしまった。
ひとりなんだと思った。
ひとりでどこにたどり着くか分からない場所へ行くのだ。
コンパスなんかとっくに壊れていて、
どこにいるのか、
どっちが正しいのか、
いつ着くのか、
何もかも分からなくなってしまった。


助けて欲しくて、灰色の悪臭漂う手で、力の限り叫んだ。
そこへつむじ風が来て、
笑い声のように声をかき消した。


もう、ほんとうに救いようのない人生だ。
でも、誰かが叫び声がつむじ風の雑音から聞こえたんだ。
その人は、
悲しいなら悲しいぶんだけ、
寂しいなら寂しいぶんだけ、
泣きたいなら泣きたいぶんだけ、
死にたいなら死にたいぶんだけ、
叫んでいた。
その叫びにやっと泣いていいのだと思った。


急に雲間からひとすじの光
私はそこでやっと膝から崩れ落ちた


ありがとう
あなたの苦しみが私を救ったんだ
でも、こうするしかないくらい辛かったんだね