がらくた

双極性障害と、本と映画と、日常と、小説ポエム書いて非日常へと。

「なんで校則って守らなきゃいけないの!?」と聞かれたら。

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私の高校は伊豆の田舎の私立学校だったが、校則が他校に比べて厳しかったと思う。

特に身だしなみ。

最近の若者は知らないと思うが、まだ私が高校生の時はルーズソックス終盤の世代で、今の高校生とは違って、化粧は大人っぽく見せようと厚化粧をしていたほうだと思う。スカートもいかに短くするかが、女としてのステータスだった。髪を染めるのは、おしゃれである証拠だ。

であるが、もちろん私の高校は全てこれが校則で禁止されていた。

当時の私はなんで身だしなみを校則でああだこうだと干渉されなくてはいけないのだと随分憤りを感じていたのだと思う。

なんでこんなにクダラナイ校則があるのか疑問に思っていた。

 

「なんで校則を守らなきゃいけないの!?」

 

と聞かれたときに、今の私だったら当時の私を納得させる答えがふと思いついたので、今日はそれを書いてみようと思う。

 

とは言いつつ、なんで校則を守らなければならないのかと言うと、あまりにも身だしなみが悪いと学校のブランドのイメージが崩れてしまうから。

というのが一番なのは分かっているが、そんなことを高校生の私に言ってしまったら「そんなの大人の都合じゃないか!」と反感を抱くに決まっているので、ここは高校生の私を巧く騙すつもりで、でも妙に説得力のあることを言ってみようじゃないかと思う。

今の私が高校生の私を騙す変な絵図ではあるが。

 

私の今の仕事は歯科助手だ。

医療関係と言えば清潔感が大事である。

清潔感がない医療関係には誰にも行きたくないものだ。

そうなると、化粧も薄化粧のほうが清潔感があるし、髪型も長い髪を束ねないまま患者の治療をしていたら、自分の口にその髪が入るんじゃないかと心配するから束ねる。

髪色も私の歯医者は全く染めてはだめではないが、もちろん金髪はだめ。

むしろ、受付が金髪だったら患者がびっくりして構えるだろう。

アクセサリーはもちろんだめ。

なにより、そんなものを付けていたら仕事の邪魔になって自ずから外したくなる。

制服も動きやすさ重視で、色気なんてものはない。

今はもう誰も履かないが、その制服に自分のアイデンティティを持たそうとルーズソックスを履いたとしても、やっぱり患者から見ればここの医院は大丈夫なのかと思ってしまうだろう。

つまり、今の私の仕事は高校の校則とほとんど変わらない。

ちなみに仕事の時の私は、高校の校則を破りながら過ごしたときよりはるかにまじめになった。今さらになって校則通りの生徒になった気がする。

 

高校生の私に言いたい。

「大人になっても校則って結構あるよ」

 

もちろん、世の中には髪型や服装が自由な仕事はたくさんある。

よくテレビで観る革新的な会社は社員全員が私服で髪型自由といった光景をテレビでよく観る。

が、髪型や服装が自由な仕事って、日本全体を見渡したらやっぱり少数派なのではないかと思う。

 

もう一つ高校生の私に言うならば、

「大人になってもずっと校則ってあるんだから、大人になったときに困らないようにするための練習だよ」

 

結構自分でもこれはいいことを言ったような気がする。

でも、何にでも反抗したかったあの頃の私はそんなことを聞いてもきっと素直に受け止められず、

「だいたい見た目で人を判断するっておかしいじゃないか。どんな派手なメイクや髪型をしたってちゃんと仕事をすれば文句はないでしょう!?」

「それはそうなんだけれど、今の世の中はみんな見た目でやはり判断してしまうんだよ」

「そんなのおかしい」

「うーん、おかしいねぇ。でもそれが日本って国だからねぇ」

「見た目で判断するなんて、変な国!」

「大丈夫。大学生になったら、髪型も服装も自由になるから、その4年間で思う存分にやりなさい」

 

とここまで書くと、何をしに大学へお前は行ったのだと言われてしまいそうだが、大学生になって今となってはかなり痛々しい服装やメイクをしていたが、それでやりたいことができたのだから良かったと思っている。

「大学生のときにやりたいことをやり尽くしたのだから、大人になって校則みたいな生活に逆戻りしても全く嫌な気持ちにならなかったのだよ」

「でもたった4年でやり尽くすかなぁ」

「やり尽くすさ」

 

少し嘘をついた。

 

本当は大学を中退しても好きな服装をしたかったので、金髪やらもっと派手なメイクをしたくて、アパレル販売員になったのだが、その後双極性障害になってしまい働けなくなり、父親の歯科医院を成り行きと言った感じで働くことになったのだが、派手な身なりのアパレル販売員から歯科助手になることに全く抵抗はなかった。

そのときは30歳近かったから年齢のせいもあるかもしれないが、もうその頃には本当にやり尽くしていたのもあったからだと思う。

 

「あと、高校生の私は、実は今の私よりアタマが硬いかもね」

「はぁ!?」

すごい剣幕で睨まれた。

確かに仕事中は身だしなみを守っているが、仕事が終われば自由なのだから、仕事のために地味な色になってしまった髪色に合う化粧や服装を考えるのが楽しくなった。

普段はアクセサリー禁止だから、アクセサリーを付ける時間は短くなった。

だからこそ、本当にお気に入りのアクセサリーを付けたいと思うようになったし、そのアクセサリーに愛着を持つようになった。

どうやら、私は与えられた環境をいかに工夫して面白おかしく過ごすことがとても上手になってしまったようだ。

 

「私のマネしてみなよ。結構楽しいよ…」

 

高校生の私はとても不機嫌な顔で私の話を黙って聞いていた。